「え?うちって、めっちゃやるやん」――難しい一着を受ける理由

社長ブログ

「他の店で断られてしまって……」

モリモトクリーニングには、そんなご相談がよく届きます。高級ダウン、ブランド物の帽子、ややこしいデザインの服。他店では預かってもらえないものが、うちに回ってくることが少なくありません。

なぜ受けるのか。今日はその理由を書いてみます。

当たり前だと思っていたこと

難しい品物を扱うのは、父の代からのことです。

僕が店を継ぐ前、ファッションが好きで、周りにもファッション好きが多くいました。友達の服を預かってくることもよくあったのですが、父はどんなものでも、なんなくこなしていました。僕はそれを当たり前のことだと思っていました。

ところが一人暮らしをしていた頃、仕方なくよそのクリーニング屋さんに持ち込んでみて、驚きました。預かってもらえなかったり、預けても全然きれいになっていなかったり、ドライクリーニングの溶剤の匂いがきつかったり。

「え?うちって、めっちゃやるやん」

外に出て初めて、実家の仕事のすごさに気づいたんです。

継いだきっかけは、別のところにありました

ただ、正直に言うと、店を継いだきっかけはその気づきではありません。

僕はもともとWebデザインや企画、ディレクターのような仕事をしていました。自分には合っていないと感じながらも、それしかキャリアがなくて続けていた仕事です。最後の会社を辞めてからは、当時ハマっていたヨガスタジオでマネージャーとして雇ってもらいました。金銭的には厳しかったけれど、楽しい時間でした。

そんなとき、母が病気になりました。それを機に、「家を正式に、ちゃんと継ぎたい」と思ったんです。

それまでの僕は、仕事をすぐ辞めたり、ちゃらんぽらんなところもありました。父も母も、僕が継ぐとは期待していなかったと思います。この状況では仕方ない、と思ってくれたのかもしれません。

技術は「見て育ち、学校で掴み、今も学ぶ」

技術の土台は、小さい頃から仕事を見てきたことと、夏休みに手伝っていた経験です。基本的なことや、ちゃんとしたアイロンの使い方は父に教わりました。ただ、父は「教えるプロ」ではありません。

転機は、クリーニング師の資格を取るための学校でした。そこで体系立てて教わって、一気に掴めた感覚がありました。もちろん、まだまだ勉強中です。

そして今でも、ややこしい生地やデザインのものは「これ、やって」と父に頼みます。85歳の現役職人である父の経験と技術は、やっぱりすごい。仕上げているところを見せてもらうのが、今も僕の勉強です。

数ではなく、向き合い方を

これからのことを聞かれると、正直、課題だらけです。今は人数が少なく、工場のキャパシティにも限りがあるので、数をこなすことはできません。人材の確保も簡単ではありません。

それでも、信頼できる仲間を増やして、一緒に勉強して、切磋琢磨していきたいと思っています。

そして何より忘れたくないのは、お客様の立場に立って、自分の大切な人のお洋服やアイテムであるかのようにメンテナンスをする、という気持ちです。

その気持ちさえ忘れなければ、どんなに難しいものでも、きちんとお客様と向き合える。たとえ、その品物がメンテナンス不可のものだったとしても、です。

「難しい一着を受ける」というのは、技術の話であると同時に、そういう姿勢の話なのだと思っています。

モリモトクリーニング 代表

守本 武司

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